冬の球児

寒い冬が始まった。
日暮れは早く、日中のわずかな陽だまりではグラウンドは温められず、校庭に出るとガチガチと歯の根が合わない。何人かの一年生達はもう着替えを済ませグラウンドの土をならしている。
まだ学生服のままの先輩に気付きサッと白い練習帽を脱ぎ
「ちわ!」
と声を張り上げる。おー。と声を返すと白い息が出る。
あと何ヶ月。
この日々の向こうに何がある。
今年も電話は鳴らない。センバツが始まるまであと2ヶ月。
今年が最後。夏になれば嫌でもこの毎日から逃れられる。
足元の土の中に混じった石砂利を足でならす。ゆっくりとまた歩き出して部室に向かう。
寒い冬の始まりは遠い夏への想像力が足りない。だから、着替えを済ませて、また走りだす。
はしっている間に冬なんて終わる。何も思い描けなくても体は絶え間なく動く。
足は嫌でも踏み出す。体はどうしても熱を持つ。呼吸は荒く、顎は上がり空を仰ぐ。
雪があの日は降っていた。試合終了とともに降りだした雪は鮮やかに人々の思い出に記憶に華を添えた。自分にとっては苦々しい事この上ない。
空から雪がこぼれ落ちないようにただ、前を向きなおし地面を蹴るしかできない。

■私もスポーツしていたんですが、冬は辛いです。走り出すと温かいんですけどね。
剣道だったんで裸の足が寒くて・・。道場入っても裸足になれずに体育館シューズはいたまま練習したり無茶苦茶してました。その頃を思い出しつつ。